2024年4月19日金曜日

東京シティ・フィル第369回定期演奏会

2024-04-19 @東京オペラシティコンサートホール



高関健:指揮
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
バイオリン:南紫音

R.シュトラウス:楽劇「ぱらの騎士」作品59、第1幕及び第2幕から序奏とワルツ集
シマノフスキ:バイオリン協奏曲第1番 作品35
ベートーべン:交響曲第3番変ホ長調 作品55「英雄」



「ばらの騎士」の音楽は他人が編曲した組曲版ではなく、シュトラウス自身の手になる作品だそうだが、そもそも違いが分からない。冒頭のホルンで、ああ、これこれとオペラを思い起こしたが。

シマノフスキのVn協は3度目なのだけど、これもほとんど記憶がない。

いずれにせよ、この前半の2曲は、弦は14型と12型の違いはあったけど、多くの管打鍵が並んで賑やかなところは共通していた。
ここまで音を詰め込むか、という感じで暑苦しいばかりだ。
まあ、それをスマートにこなしていたとは思うが、楽しい音楽ではなかった。

後半。
シュトラウスと同じ弦編成(14-12-10-8-7)で「英雄」。これが実に良かった。
前半に厚ぼったいのを配したのは、軽快な「英雄」を聴かせたかったからか、と勘ぐりたくなるほど、気持ちの良い演奏で、何十回も聴いている「英雄」のオーケストレーションの巧さに、初めて気がついたものであった。
簡潔で無駄がなくすべての楽器が効果的に使われていて新鮮な驚き。これが高関健せんせいの今日の新工夫だったのだろうか。

♪2024-055/♪東京オペラシティコンサートホール-03

2024年4月13日土曜日

新日本フィル:すみだクラシックへの扉#22

2024-04-13 @すみだトリフォニーホール



佐渡裕:指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団
角野隼斗:ピアノ*

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番変口短調 Op.23*
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調 Op.64
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J.S.バッハ:羊は安らかに草を食み 変ロ長調 BWV208-9*
弦楽セレナーデ Op.48から第2楽章ワルツ




以前は好ましいと思っていた佐渡ちゃんも、昨年末の「第九」でちょいと違和感を感じた。

それ以来の登場で、今回は初めて聴く人気者の角野隼人とどんなチャイコを聴かせてくれるのか?と半ば不安混じりだったが、不安的中。

出だしのオケは良かったが、どうもPfのテンポが速い。オケとの会話が成立していないような気さえした。爆走するチャイコだ。
このテンポは指揮者と独奏者のどちらが決めているのだろう?少なくとも両者納得しているのだろうが、僕の耳は追いついてゆかなかった。

角野のピアニズムは華麗で、リストが生きていたらこんなふうに弾くのだろうかと思いながら聴いたが、落ち着きがなかった。

後半のチャイコ5番も第1楽章のテンポが”自在に変化”するのがちょっと耳障りだった。

佐渡ちゃんはもうしばらく、要観察だよ。

2024-051/♪すみだトリフォニーホール-03

2024年4月12日金曜日

みなとみらいアフタヌーンコンサート2024前期 佐藤晴真 & 仲道郁代 デュオ・リサイタル

2024-04-12 @みなとみらいホール



佐藤晴真:チェロ
仲道郁代:ピアノ

シューマン:幻想小曲集 Op.73(チェロ版)
ショスタコーヴィチ:チェロ・ソナタ ニ短調 Op.40
フランク:バイオリン・ソナタ イ長調(チェロ版)
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ショパン:チェロ・ソナタから第3楽章






なかなか渋い内容だった。
ショスタコのVcソナタは2回目だったが覚えていなかった。が、彼の作品は何を聴いてもショスタコ印が刻印されているから、ああ、ここに印が、ここにも…と楽しんだ。

シューマンとフランクは何度も聴いている。
フランクのソナタはもちろんVnで多く聴いているがチェロも何回かある。直前は笹沼樹Vcと上田晴子Pfだったが、この時の楽譜は2人がチェロ用にアレンジしたものだった。
今回のはどうだったろう。聴き馴染んだVn用をそのまま使ったようにも思えたが。
この曲、いつも思うけど、第1楽章と第4楽章、いずれも好きだけど、前者のフランス風な軽いタッチと後者のドイツ古典派風な音楽の合体がしっくりこないけど面白い。

この演奏で、冒頭の旋律でVcは音を外した。ツボを外したというより、指遣いを間違えて音が外れたみたいな感じだった。ま、終わってみれば熱演でそんな小さな瑕疵は消し飛んだけど。

佐藤は今日で7度目。
彼のVcの音は大抵硬めだ。今日も硬かったが、明瞭で良い感じ。加えて仲道のPfもいつものYAMAHAらしい硬さがDUOに好都合だったかも。

♪2024-050/♪みなとみらいホール-011

2024年4月7日日曜日

團伊玖磨生誕100年記念公演 神奈川フィルハーモニー管弦楽団 Dramatic Series 歌劇「夕鶴」

 2024-04-07 @横須賀芸術劇場



沼尻竜典:指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
横須賀芸術劇場少年少女合唱団:子どもたち

砂川涼子(すなかわりょうこ):つう
清水徹太郎(しみずてつたろう):与ひょう
晴雅彦(はれまさひこ):運ず
三戸大久(さんのへひろひさ):惣ど

團伊玖磨生誕100年記念公演
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
Dramatic Series
團伊玖磨:歌劇「夕鶴」<セミステージ形式>

第1部
 約85分
---休憩20分---
第2部
 約30分




「夕鶴」は、記憶が正しければ、半世紀近く僕が前に初めて観たオペラだ。つうは伊藤京子さんだったと思う。

それ以来の「夕鶴」だったが、物語自体は有名な木下順二の戯曲なのでいろんな形で頭に入っている。


横須賀芸劇は、あまり良い印象がないのだけど、今日の神奈川フィル・オペラの出来栄えが好印象に塗り替えた。


前回の神奈川フィル・オペラ「サロメ」も<セミステージ形式>と謳ってあったが、これが<演奏会方式>とどう違うのか、両者の違いに関する確立された見解はないようだが、この2回と、典型的な<演奏会形式>の東フィル・オペラと比べると、神奈川フィル版では、歌手はふさわしい衣装を纏い、舞台を縦横に動き回って演技をしながら歌う。舞台装置は極めて簡素だが一応ある。

したがって、歌手がドレスや燕尾服を着て立ったまま譜面台の前で歌うスタイルに比べるとずっと本舞台形式に近い上演だった。


特に、今回の横須賀芸劇では、ピット部分と客席の前3列を潰して舞台を拡張し、オケの前に相当広いスペースを確保したので、より本舞台に近い感じで観ることができた。


そして演唱と児童合唱とオケが、いずれも見事な上出来で、ぐいぐい引き込まれた。


なんと言っても、我がマドンナ、砂川涼子姫が抜群に良い。

これまでいろんな役を歌うのを聴いてきた。中ではミミやミカエラなどが嵌り役のように思っていたが、違うね。つうこそ砂川涼子にぴったりだ。もう他のソプラノじゃイメージできないくらいの嵌り役だった。


与ひょうの清水徹太郎も、運ずの晴雅彦も、惣どの三戸大久も、終わってみればすべて嵌り役だった。

横須賀芸術劇場少年少女合唱団もきれいな声で大役を果たした。


終盤のつうの最後の歌。

つうが鶴となって飛び立ち、残された与ひょうが痛恨の思いで「つう」と叫ぶシーンは、もうウルウルとしてしまった。


CCで並んだ際の砂川涼子の眼は潤んでいたと思う。オケの面々も心なしか眼を瞬かせていたようにも見えた。

舞台と客席が暖かい空気で一体感を以て繋がった、そんな印象を持った。


♪2024-049/♪横須賀芸術劇場-01

2024年4月3日水曜日

東京都交響楽団 第996回 定期演奏会Bシリーズ

2024-04-03 @サントリーホール



大野和士:指揮
東京都交響楽団
藤村実穂子:メゾソプラノ*

【定期演奏会1000回記念シリーズ①】
【ブルックナー生誕200年記念/アルマ・マーラー没後60年記念】
アルマ・マーラー(D.マシューズ & C.マシューズ編曲):7つの歌 [日本初演]
ブルックナー:交響曲第3番ニ短調 WAB103(ノヴァーク:1877年第2稿)




大野+都響は、先日「トリ・イゾ」で良い仕事をした。
同じ様な出来を期待したけど、こちらはどうもまとまりに欠けた。弦の響もイマイチ。

ピットと舞台。新国立劇場とサントリーという場所の違いもあるけど、今日の都響は、いつもの様に喧しいだけという印象が強かった。

それに、元々、ブルックナーは昔から良さが分からない。

冒頭数小節目からはじまるTuttiの強奏が、とても大げさで聴いていて恥ずかしくなる。その後も似た趣向が繰り返されるが、ベートーベンはもちろん、シューマンやブラームスなら絶対書かなかった旋律だ。
TVドラマの◯◯ライダー、とか◯◯サスペンスとか、◯◯将軍といった劇伴音楽ぽいので、笑ってしまう。

それでも演奏に隙がなけりゃ<管弦楽>として楽しめるけど、今日の都響はそんなレベルではなかった。

♪2024-048/♪サントリーホール-08

2024年3月30日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 第395回横浜定期演奏会

2024-03-30 @みなとみらいホール



小林研一郎:指揮
日本フィルハーモニー交響楽団

神尾真由子:バイオリン*
石丸由佳:オルガン**

モーツァルト:バイオリン協奏曲第5番イ長調 K.219「トルコ風」*
サン=サーンス:交響曲第3番ハ短調 作品78「オルガン付き」**
-----------------
パガニーニ:24のカプリースから第5番*
アイルランド民謡:ダニーボーイ(弦楽合奏)
サン=サーンス:交響曲第3番第4楽章終結部




昨日のオケは良い音だったがピットの中だった。
1Wぶりに舞台上のプロオケを聴くと、モヤの晴れたくっきりと明瞭で美しいサウンドに、まずは一安心した。

しかし、今日の2本は誠に不思議な思いで聴いた。
モツVn協5番もサン=サーンス「ガン付き」もとても聴き馴染んだ作品だ。後者は先月も聴いたばかり。

よく馴染んだ音楽なのに、頭の中で少しも纏まらないのが不思議だった。
特にモーツァルトはどうだろう。全部、繋がってゆかない感じだ。特に3楽章は、作曲者に精神の異常があるのではないかと思うほど纏まらない。いや、異常はこちらか。

コバケンは、若い頃はその良さが分からなかったけど、最近はとても好ましく思うし、この人には、思い切り好きに振ってほしいし、それを味わいたいと思っている。

後半、オルガンが本領を発揮してきて、堂々たる旋律がゆったり目のテンポで進んでゆく時に、抑えた表現の中に溜めが効いていて、微妙なバランスを保つ緊張が解けないのがマジックのようでゾクゾクしながら聴いていたが、それがラストのクライマックスで完全放出とはいかなかったように思った。
つまり、僕の感性不足なのか。隔靴掻痒の感があったが、もう一度同じ演奏を聴いてみたいとも思った。

余談:サン=サーンスのガン付きを含むプログラムでは、今日のように神尾麻由子がVn協などで共演するのは4回目だ。先月も然り。彼女がガン付きを運んでくるのか?

♪2024-046/♪みなとみらいホール-10

2024年3月29日金曜日

新国立劇場オペラ「トリスタンとイゾルデ」

2024-03-29 @新国立劇場



指揮:大野和士
演出:デイヴィッド・マクヴィカー
美術/衣裳:ロバート・ジョーンズ
照明:ポール・コンスタブル
振付:アンドリュー・ジョージ

管弦楽:東京都交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団

トリスタン:ゾルターン・ニャリ
(←トルステン・ケールの代役)
マルケ王:ヴィルヘルム・シュヴィングハマー
イゾルデ:リエネ・キンチャ
(←エヴァ=マリア・ヴェストブルックの代役)
クルヴェナール:エギルス・シリンス
メロート:秋谷直之
ブランゲーネ:藤村実穂子
牧童:青地英幸
舵取り:駒田敏章
若い船乗りの声:村上公太
ほか

ワーグナー:歌劇「トリスタンとイゾルデ」
全3幕〈ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付〉

予定上演時間:約5時間25分
第Ⅰ幕
 85分
 --休憩45分--
第Ⅱ幕
 40分
 --休憩45分--
第Ⅲ幕
 80分






思いつくままに記せば、大野ちゃん、あまり大きくないので僕の席からは目半分から上しか見えなかった。

その都響の演奏。これがびっくりするほど良かった。
ピットゆえの穏やかな響が奏功して、上野やサントリーで聴くようなキンキラの音ではなく、同じコンビの「マイスター〜」も良かったが、あの時以上に音が練れていた。
最初が良かったので、もうオケに関してはその後も大船に乗って聴いた。

歌唱陣もトリスタン以外は全員新国で経験済み。可もなく不可もなく。抜きんでた人はいなかったが、クルヴェナールを歌ったEシリンスって、この役で得をしたなと思った。好感。

御大、藤村美穂子。イゾルデのリエネ・キンチャに比べると質量1/2くらいなのに、出すべきところは出して存在感あり。しかし、プロンプターを気にし過ぎで、演技に不満。

今回、生舞台は初めてだったが、Discで何度も観ているので馴染んでいるつもりだったが、2幕終盤の<マルケの嘆き>に、しみじみとした。物語の深さがここによく現れている。

ラストの「愛の死」。「愛」が死ぬ訳ではなく、「愛によって死ぬ」の意味だが、この演出ではイゾルデが愛の力で死ぬことがはっきりしないなあと思って見ていたところ、明らかに気分ぶち壊しのフライング拍手。
残念無念。

♪2024-045/♪新国立劇場-06